主治医の先生から打診された血糖値の測定方法は、主に二つ。
アボットジャパンの「Freestyle リブレ」という血糖値測定器を使って測定する方法と、従来の穿刺を用いて耳から血液を取り、測定する方法である。
血糖値が安定しない以上、できる限りこまめに測定する必要がある。穿刺だと、何度もモカの耳に針を刺すことになるので、モカの耳に傷を付けるのが嫌だった。
私は「Freestyle リブレ」(=以降、リブレ)を選んだ。
手のひらに収まるサイズの黒い機械が読み取り装置で、いわゆるモニターだ。丸くて白いボタンのような装置が、身体に取り付けるセンサーとなり、モニターをセンサーに翳して血糖値を測定できる。
この「freestyle リブレ」(=以降、リブレ)は2週間きっちりでセンサーの交換が必要だ。1週間と2日とか、10日だけとか、中途半端な日数での交換はしない。センサーを交換して、モニターはそのまま使い続ける。もちろん、交換のたびに診察を受けるのでその他もろもろの費用がかかる。けれど、モカを思えばその方が安心できるとプラスに考えて、迷わず「リブレ」を選んだ。
「リブレ」のレンタル料とセンサーの交換料は、動物病院によって金額の設定が微妙にちがう。モカのかかりつけ動物病院では、¥12000だった。他の病院では¥10000で設定しているところもあるし、¥7000程度の病院もある。二週間ごとにこの金額がかかるので、決して安くはない価格だ。
わが家では、動物病院の窓口で精算時に適用できるペット保険に加入していたので、請求額は半分の50%であるが、リブレのレンタル・交換料以外にも、インスリン注射のための専用シリンジ代やお薬の料金もかかるので、おおよそ1回受診するたびに¥2.5万〜¥3万の請求があり、保険適用でも¥1.2万〜¥1.5万を支払っていた。
ちなみに、センサーが取れてしまったら付け直しが必要になり、その都度おなじ料金がかかる。一度だけ、センサーを交換してもらい、動物病院から帰宅してすぐに外れてしまったことがあり、同日にリブレ代が1.2万✖️2=2.4万となって、がっかりした。
他のブログを見ても、この測定器の手軽さやオススメする記事ばかりが目立ち、金額的なところや、実際の血糖値との誤差、不具合などの記事は見かけない。リブレを選択肢に入れるのならば、まずは、かかりつけの動物病院にレンタル料金の確認はしておいたほが良いだろう。
私は、実際に使用したからこそわかる、この選択のマイナスな部分もお伝えしたい。このブログに辿り着いた愛猫家の仲間にはよく考えて選択してほしいからだ。
動物病院から渡された「リブレ」のモニターは、明らかに他の子が使った後のものだ。病院に数台あって、おそらくそれを使い回すのだろう。身体に付けるセンサーはもちろん新品だ。モニターの方は、別にお古でも何でも良いと思っていたし、リブレがネットで購入できるとを知らなかった。
「リブレ」は人間の糖尿病患者に使用される血糖値測定器だ。
センサーに翳すだけですぐに血糖値が読み取れる手軽さは非常に便利だし、血糖値が時間とともに折れ線グラフ化されるので、1日の血糖値の推移を把握しやすい。過去と現在の血糖値の状況を画面を見比べて比較もできるから、投薬治療や食事療法がどの程度効果が出ているのかも推測しやすい優れた利点もある。だから、実際に使ってみて「リブレ」の機能には感動した。
後々知ったのだが、「リブレ」はネットでも購入できる。
ショップにもよるが、モニターとセンサー1個のセットで1万5千円程度で購入でき、二週間ごとに交換が必要になるセンサーは安くて7千円程度で購入が可能だ。動物病院のレンタル料金が不要になり、センサー交換の処置代だけになれば、費用は負担はもう少し抑えらるはずだ。
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もし、半年前にタイムスリップできるなら、私は新品の「リブレ」をネットで購入する。
その方が費用が安く済むからだけではない、他の理由もある。
新品の「リブレ」を自分で購入していたら、モカはもっと長生きできたかもしれない・・そう思うからなのだが、根拠は後半でお話する。
モカの背中の体毛を剃り、丸いセンサーを取り付ける。センサーの中央にはとても細い穿刺がついているのだが、とても細く本人は違和感を感じても痛みは感じない様だ。
センサーを取り付けるたびに、モカの背中にはハゲができていった。二週間ごとにハゲができるから、体毛の成長は追いつくわけがなくあっという間に背中は禿山のようになった。季節は冬だったので、寒がって可哀想だったし、強力なテープで貼られているのでかぶれがひどかった。
運営するウェブショップで取り扱っている猫用の洋服に、赤いチェック柄のかわいいワンピースがあった。背中のハゲを隠してあげたいし、できる限り寒くないようにしてあげたい。でも、着脱のしやすい服を・・と思い、前にスナップボタンが付いているワンピースを着せた。モカは、昔から赤いギンガムチェックがよく似合う。術後服のようなものは、極力避けたかった。機能性や安全性を考えれば、術後服のようなものが適しているが、オシャレさんのモカに、いかにも病猫のような格好をさせたくはなかった。
ワンピースはとても似合っていて、その時の彼女の写真をそのままショップの商品イメージに使用した。
背中はセンサーを交換するたびにハゲができ、かぶれも広がっていった。とても痒がり、もどかしがったが、ワンピースのおかげでセンサーが取れたり、背中に引っ掻き傷を作らずに済んだ。リブレの装着を選んだら、着脱がしやすくストレスにならない猫服を準備することは必須である。
ワンピースを洗濯すると、背中をガードするものがなくなるので、エリザベスカラーを使用した。市販のエリザベスカラーや病院仕様のものは、首周りを摩擦で刺激したり、重かったり、必要以上に幅をとるものが多くモカが嫌がった。
そこで、市販のエリザベスカラーを使うのをやめ、モカの首に負担にならずいつも清潔に保て、軽くてやさしいエリザベスカラーを手作りすることにしたのだ。
おしゃれ好きのモカが、いつも可愛くいられるように色柄も妥協したくはなかった。首への負担を軽減するため、軽く、クルクル必要以上に回らないものを目指した。それでいて、必要以上にカラーの幅がない、ビブや首輪をつけている感覚の延長線上のものが欲しかったのだ。柔らかく優しい素材で、いつも洗えて清潔なことも大切だった。
今、好評いただいている当店オリジナルのエリザベスカラーは、モカのために手作りしたのがきっかけだ。愛猫家のお客さまから、嬉しいコメントやレビューをいただくたびに、モカが生きた証になって、お役に立てていることが嬉しくて涙が出る。
モカの治療は順調に思えた。時折、おしっこが出なくなることや、なかなか安定しない血糖値に翻弄されえながらもいずれは糖尿病を離脱できるはずだと信じていた。
だから、突如として虹の橋へ旅立ったことが今でも信じられないし、悔しくてたまらない。しかもそれがまだ、先月の出来事だなんて・・・まだ受け入れられないでいる。
もし、リブレを自分で購入していたら・・・もっと、こまめに血液検査をしてもらえていたら・・もし、途中で穿刺による測定方法に変更していたら・・・今でもモカは、糖尿病と闘っていたのではないかと悔やまれる。
いつからか、「リブレ」の表示する血糖値は、実際の血糖値よりも200〜400以上も乖離した数値を表示するようになっていた。私も主治医も、誰も気づかなかった。主治医の先生も、「こんなズレははじめて見て・・」と仰った。
他の動物病院でも、毎回このリブレの数値を見て判断しているところは多い様子だ。他院のブログを読んだり、調べてみると、毎回リブレと実際の数値の誤差までこまめに確認している病院は少ない。
モカが先月8日の朝、透明な液体を嘔吐し、嘔吐物をじっと見つめて肩を落とすモカを見て、モカの身体に何かがまた起きていると直感した。すぐに動物病院を受診したのだが、その二日後、モカは虹の橋へと旅立った。
3月8日のその日は、すぐにかかりつけの動物病院で血液検査が行われた。血糖値が600以上もあり、「リブレ」では測定不能の高血糖だった。その時の「リブレ」は200台の血糖値を表示しており、模範的な推移をグラフに示していたのだ。
血糖値の乖離は実に約400のズレ・・・誤差というレベルではない。
明らかにおかしい数値だ。故障していたと考えられるが、故障を疑うようなワーニングも不具合も特に表示されなかった。これが、機械の劣化によるものなのか、他の理由があるのかは未だ不明のままだ。
そもそも人間用の血糖値測定器だし、機械だから誤差(ズレ)があるのは百も承知だ。一般的にリブレの示す血糖値のズレは、10〜30程度ある印象だ。
後にリブレを調べてわかったのだが、リブレのモニターに「LO(低血糖)」の表示が出て50以下と思われた血糖値が、実際には60〜70台の血糖値であることも少なくないようだ。
他の測定方法では慌てるべきところだが、リブレの場合は、愛猫の様子をみながら慌てず対応しても大丈夫そうだ。私のように、慌ててガムシロップを投与し、逆に急激な高血糖に引き戻してしまうのは愛猫の身体に負担となり、結果的に良くはないだろう。このよな誤差についても、今になって思えば事前に説明が欲しかった・・。
とはいえモカのリブレの場合は、400もの乖離が生じているのだから、誤差ではなく明らかに故障していたと考えられる。少なくても200〜400のズレが生じていた様だ。悔しくてたまらないが、誰かを訴えたり、何かを非難したところで、モカはもう二度と戻ってきてはくれない。せめて、このようなことも、実際に起き得るのだということを、愛猫家の仲間や獣医師に知っておいてほしいと思うのだ。
リブレの誤差で、うまくコントロールできていたと思われた血糖値は、全くコントロールできていなかったことになる。3/8の前日まで、150〜200台の血糖値をマークし、もしかしたら糖尿病から離脱できるかもしれないという淡い期待は、この不運によって打ち砕かれてしまった。実際には、リブレでは測定不能な600台前後の高血糖状態が続いていて、そのせいで、モカは糖尿病の合併症を起こしたのだ。
病院の待合で吐いた緑色の液体は、膵炎や胆汁が多量に分泌された時に出る色だ。そのまま預かります・・と、ケージごとモカを渡し、入院させることになった。その翌日にはさらに容体が悪くなり、10日の日にはすでに手の施し用がなくなった。主治医の先生から電話があり、家で看取るか、病院でこのまま預かるかの相談があった。
急な展開に、頭が付いていかず、もう死を待つしかない状況を受け入れきれずに、他に方法はないのかを何度も先生に質問せざるを得なかった。
合併症による「急性腎不全」なので、人工透析をするか、腹水を針で抜き、人工的に腎臓の役割を作りだす方法もなくはないが、透析ができる病院は都内の限られた病院で数も少なく、費用的にも現実的ではないとの説明があった。腹水を抜く方法は、高確率で合併症を起こしやすく、免疫力の無い糖尿病を患う猫に施すのは危険が伴い、お腹も処置をするたびに、針で穴だらけになってしまうとのことだった。
主治医の先生から説明を受ける間も、モカは自力で排尿ができない状況にあり、圧迫排尿ですら出せなくなっていて、点滴は腹水になり溜まるばかり。インスリンの投与も諦めざるを得ない状況になっていた。
尿毒症の末期症状で、痙攣を起こした際に落ち着かせる座薬を処方され、家で看取るため病院を後にした。
この悔しさは、一生忘れることはできそうにない。
「糖尿病」という病は、本当に恐ろしい病気だ。血糖値をコントロールできないと、体のいたるところで不具合が生じる。そして、血糖値のコントロールも楽ではない。測定ひとつとっても、慎重にならねば今回の不運な事態を招きかねない。
糖尿病で苦しむ猫ちゃんや、闘病生活を共にする猫ちゃんのご家族のために、モカの経験が治療の選択などにお役に立てることを心から願っている。
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