『le premier quartier 猫用品専門店』は、5匹の猫’sと+1名の下僕で立ち上げた「猫好きの猫好きによる猫のため(猫好きのため)」のショップです。
立ち上げた・・とは言っても、やっとの思いでオープンさせたWEBショップですが、当時はまだ、私は会社員(副業NGの固い金融業界)だったので、密かに趣味程度の運営を続けていました。
いまでは当店モデルとして大活躍の、我が家の三男坊デューク氏。
ダントツ仕事のできる男に成長した彼との出逢いを、今日は綴っておきたいと思います。
我が家の先住猫4匹に迎えられ、彼がわが家の一員になったのは2020年の9月14日。
出会った日を忘れないように、この日を彼の誕生日にしました。
(おそらくは、3月くらいの春先で生まれた子なのかと思います)
彼と出会う1年ほど前に家を建て、庭に大好きな薔薇を植え、色とりどりの薔薇の花が庭を彩るようになった頃、ある日を境に、薔薇の花だけが鋭利な刃物で刈り取られる事件が起きたのです。
今思い返せば、この珍事件が勃発していなければ、彼との出会いはなかった様に思います。
引っ越したばかりで誰かに相談することもできず、不安は募るばかり。私は、近くの交番に助けを求めることにました。
渋い顔で現場をチェックする警察官。
警察官:「切り口を見ると、かなり鋭利な刃物で切られていますよ。これは・・奥さん!あなた怨恨の可能性はないですか?思い当たる人物は?」
私:「引っ越したばかりですし、恨まれるようなことはしていません・・・」
なかなか珍事件は治らず、ついに「セ○ム」なる警備のプロに頼ることにしました。防犯カメラと警備システムを導入し、犯人を捕まえるべく「セ○ム」と契約。
設置して間も無く、犯行現場はカメラに録画され、犯行の一部始終は記録されていました。
目を凝らしてカメラの画像に見入る私と夫。
「・・・・。」
そこには、赤や黄やピンクの色彩を掃除機のように吸い込む犯人が映り込んでいたのです。まん丸い目、よく動く頬、あっという間に私の庭から色彩を奪うモシャモシャの・・・。
しばらく沈黙が続き、録画された犯行の様子をリピート再生。
夫:「野ウサギが犯人でしたなんて、いまさら警察に言えないよね・・。」
わが家の周辺は、自然はところどころ残されているものの、近くに線路も道路もある普通の新興住宅地。野ウサギというお客さんが来ることは、想定外でした。
もちろん、薔薇よりも野ウサギの命の方が大切です。それ以来、この可愛いお客様のオモテナシとして、薔薇を育てることにしたのですが、今はもう訪ねてきてはくれません。
ウサギが薔薇の花が好物だと知ったのは、この時です。
「薔薇どろぼう」の訪問をチェックするのが楽しみになった頃、「薔薇どろぼう」の代わりに頻繁にカメラに映る様になったのは、ひどく痩せた仔猫の姿でした。木枯らしがカメラを揺らし、日に日に寒さが増すというのに、日に日に痩せていく知らない仔猫。ただやだ、カメラの前を横切るだけ。
心配で、毎日カメラをチェックする私。
野良猫だから、保護するのも容易ではないし・・・。あんな痩せっぽっちなのに、もしどこかのお宅の飼い猫だったら・・・でも、あれだけ痩せていては、この冬を越すことはできないだろうに。
ある日の夕刻。
窓辺で秋風を受けながら、毛繕いに忙しい長男(ショコラ)がふと窓の外に目をやり、何かをじっと見つめていました。長女(ラムネ)も一緒に窓辺を陣取り、同じく窓の外の何かに目を奪われている様子。窓の外に目を凝らすと、玄関前に小さく佇むあの仔猫の姿がありました。
玄関のドアと、窓辺に陣取るわが家の猫たちを交互に見つめる仔猫。
お腹を空かせているに違いなく、力無く佇みながらも、時折背筋をピンとさせ、座り直しては玄関のドアを見つめる健気な姿・・・。知らない人間の住む家の前に突然居座るなんて・・・警戒心の強い鋭い眼差しの仔猫は、まだ1歳にもなっていないのだろう。この日から、カメラに映る仔猫の姿は日に日に増し、ついには玄関先に居座って、私たちの帰りを待ち始めるようになったのです。
玄関のドアの前に座り込み、重く冷たいドアを見つめる日が続きました。
「うちの子の残り物だけど・・・よかったらどうぞ。」
驚かせてしまっては可哀想なので、玄関のドアを少し開け、小さなお皿にのせたお裾分けを差し出しては、防犯カメラ越しに見守る日が数日続いたのでした。お裾分けを平らげても、なお冷え込む夜の庭から、羨ましそうに、窓の奥の暖かな部屋と冷たく重い扉を見つめ続ける仔猫。
(もしかしたら・・)
「寒いよね・・良かったらどうぞ」小さく開けてみた玄関のドア。しばらくは開けたまま、放っておくことにしました。
どのくらい過ぎたのか覚えていませんが、いつの間にか庭先の仔猫の姿が見えなくなり、家の中に入ってくれたのか、それともどこかへ行ってしまったのか検討もつかないまま、夜も遅いので玄関ドアを閉めることにしました。
その頃デュークは、2階へ上がり、わが家を気ままに探検し、わが家の「図書室」を自分の部屋と決めた様子。
その日から、暖かな窓辺に寝転んで庭先を見つめる生活を、先住猫4匹とともに送ることになったのです。
ひどい栄養失調状態で、しばらくは動物病院通いになったけれど・・・今ではちょっとぽっちゃりの、新米猫店員としてショップモデルも務める頼もしい子に成長してくれました。
元気でいてくれること、そばにいてくれることに、ただただ感謝しかない毎日です。
コメント