「世界最小の猫」と言われ、「賢い猫種ランキング」でも上位にランクインする「シンガプーラ」。
アビニシアンと見た目で間違われやすいのですが、毛色と大きさ、そして性格も違います。
ペットショップでもあまり見かけない希少種で、それゆえ価格も少々お高めのシンガプーラですが、美しく愛らしい見た目から、気になっている猫好きさんも多いようです。
わが家には、来月6歳になるシンガプーラのバロンがおります。
「シンガプーラって何か気になる・・」
「シンガプーラを飼おうか迷っているの・・」
そんな方に、猫図鑑で知った「シンガプーラ」の情報と、実際は何がどう違ったのかや、性格や特徴、罹りやすい病気など、家族だからこそ分かる感想も含めてご紹介します。
シンガプーラは美しい
「シンガプーラはイエネコの中でも最も小さい種だ。天使のような愛らしい姿と、聡明でユーモアにあふれ、愛情深い性質を持つ。家族みんなの注目を一身に浴びたがる一方、豊かな感性で飼い主の気持ちをいち早く察し、悲しみのときも喜びのときも寄り添ってくれる心優しい猫である。」
ー『世界で一番美しい猫の図鑑』タムシン・ピッケラル著
シンガプーラは「小さな妖精」とも言われています。
成猫でも2〜4kgほどしかなく、小柄で可愛らしい見た目の猫です。もともと、シンガポールに生息していた野良猫から自然発生した猫で、1970年代から品種化が始まりました。
『世界で一番美しい猫の図鑑』によると、シンガポールのドレイン(下水溝)には「ドレイン・キャット」と呼ばれる野良猫がたくさん住み着いていて、それらの猫は体型も大きさもまちまちだったのですが、その中に現在のシンガプーラによく似た、小柄で愛くるしいブラウン・テックドの猫たちも交じっていたようです。
その猫たちに着目したのが、遺伝子学に造詣の深いアメリカ人のハル&トミー・メドゥ夫妻でした。
アメリカに帰国した際に連れ帰った猫たちが、現在のシンガプーラの基礎になった様です。シンガプーラは、1982年にCFAのレジストレーション・オンリーに設定され、1988年にはチャンピオンシップ・ステータスに昇り詰めました。イギリスでも2007年には2匹のシンガプーラが英国インペリアル・グランド・チャンピオンに輝いたのです。
昔は「ドレイン・キャット」と言われ、その魅力を十分に理解されておりませんでしたが、現在では母国シンガポールの広告塔となり、母国のみならず世界で愛される猫になりました。
とても美しい図鑑として注目された『世界で一番美しい猫の図鑑』は、愛猫家の間で知らない人はおそらくいないでしょう。私も図鑑の美しさに惹かれ、書店に注文をしました。その表紙を飾った猫が、この「シンガプーラ」です。図鑑の表紙になり、シンガプーラの存在はさらに注目される様になりました。
わが家のバロン(男の子)は体格がよく、今は体重が5kg近くあります。小柄は小柄なのですが、筋肉質でムキムキなので、抱っこをすると(小柄なのに)ズッシリしています。
シンガプーラの身体の特徴として、全身の筋肉が発達していて、足先は楕円形で小さいため、四肢が先細りに見え、「猫のボディービルダー」の様です。(クリームパンみたいな、丸くてよく見かける猫の足先ではありません)
「妖精」と言われますが、子猫のときはその名の通り、猫の姿をした妖精のようでした。初めてわが家に来た時、夫くんはバロンの愛くるしい瞳に見つめられ、反射的に涙が止まらなくなり、独り泣いていました(笑)。
シンガプーラは、他の猫には無い不思議な魅力を持っています。夫くんはバロンに、魔法をかけられたのかもしれません。
毛並みは短く、代表的な色はセピア・ティックド・タビーで深いアイボリーの地色にセーブルのティッキングが混じります。目は大きなアーモンド型で美しいグリーンやカッパー、イエロー、ヘーゼルなど様々。尾は細長く、先端が丸いのが特徴です。小顔な上、瞳が顔を占める割合が多いので、シンガプーラはアイドル級のモデル顔です。
シンガプーラの性格
シンガプーラを紹介するネット情報を見ると、温厚でおとなしく繊細で多頭飼いには向かないと紹介されていることが多いようです。ほとんど鳴かず、集合住宅でも飼育しやすく、非常に飼いやすいと書かれていたりします。
シンガプーラのこのような紹介を見るたびに、「うちの子は、珍(チン)ガプーラか?」と夫くんがよく言っています。(笑)
小柄な見た目と、特徴的な小さな鳴き声から、おとなしくて温厚なイメージを想像するのでしょう。わが家のバロンだけなのでしょうか?決して、おとなしく温厚ではありません(笑)。
彼はいつも尻尾をぶんぶん振り(猫の感情は尻尾に出る)、文句も言い、よく喋り(たまに喋りすぎて咳き込む)、感情を表に出して自己主張をします。おもしろくないものはオモシロクナイし、嫌なものはイヤダと全身で訴え、機嫌が悪い時は80年代のヤンキーさながら、弟分に喧嘩を売ります。そんな彼が愛おしくてたまらないのです。
わが家にお客様が来たときは(滅多にありませんが)、「ほら、(バロンが)何か言ってるよ。聞いてあげて」と来客に言われてしまうくらいお喋りです。
感情豊かで繊細なのは、他の猫たちと比較してもダントツ。それゆえにシンガプーラの知能の高さが伺えます。
個体差があるのはどの猫種でも同じですが、多頭飼いに向かないとは言い切れません。わが家は多頭飼いで現在は4匹おりますが、一緒に遊んだり、くつろいだり、仲良く暮らしています。
それから「集合住宅でも飼いやすい」という紹介を鵜呑みにして、広さが十分ではない部屋や、お隣りさんを気にしながら飼うのは推奨しません。
繊細で活発なシンガプーラにとっては、狭さや騒がしい環境が他の猫種以上にストレスになります。
シンガプーラの鳴き声は、掠れたような響きにくい声が特徴です。響きにくいので、ペットショップの店員さんは「あまり鳴かないです」とか、「だから集合住宅でも飼えますよ」と説明しているのを見かけます。
実に人間都合のものの見方で迷惑な説明だと思いました。
狭いショーケースに耐えられずに鳴いて暴れ、数時間で店の奥に移動になったシンガプーラの姿も目にしています。売りたい側の説明を鵜呑みにせず、しっかりと観察し、どんな性格でも受け入れる覚悟がなければ、猫を迎えてはいけないのだと思います。
多頭飼いは向かないとされていますが、シンガプーラの様に賢く知能の高い猫種の場合、一匹だけでは孤独と退屈で、かえってストレスになる場合も考えられます。
飼い主が留守がちになってしまうお宅では特に、メンタルが心配です。小さな身体でおとなしそうな見た目ですが、筋肉ムキムキのアスリート系ですので「おとなしくて静か」という説明も鵜呑みにしない方が良いですね。
単頭飼いのシンガプーラが、度重なる粗相や、過剰過ぎるグルーミング、過度の悪戯などでお困りの場合、孤独がストレスになっている場合も考えられます。
シンガプーラと一緒に暮らすと、犬を飼っているかの様に感じることがあります。
そう考えると、ワンちゃんと暮らす感覚もシンガプーラとの暮らしには必要かもしれません。適度にかまって遊んであげて、適度に独り時間を用意する。シンガプーラに限ったことではありませんが、猫もその子に合わせて環境を整え、こちらから理解しようと歩み寄る姿勢が大切ですね。
ヤフーの知恵袋やお悩み相談系のサイトでは、シンガプーラはおとなしいと言われて飼ったのに、夜の運動会が激しいとか、ソファーや壁をボロボロにするから困るというコメントを見かけます。厳しい様ですが、そういう方に猫を飼う資格などは無いのです。人間に猫を合わせるなかれ、人間が猫に合わせるのです。
シンガプーラのおとなしそうなイメージや、ネットの紹介を鵜呑みにし、飼ってから後悔するなど言語道断です。シンガプーラであれ、他の猫種であれ、猫は猫。
ソファーや壁紙がボロボロになって、夜の運動会で不眠になっても、それはわが子が元気な証拠と思いましょう。今は、爪研ぎで傷がつきにくい素材の家具が手に入ります。
爪とぎが激しい部分だけタイルを貼るとか、ボロボロになってもかえって味わいがでるジーンズ素材のソファーにして、インダストリアルなインテリアを目指すなど、ちょっとした工夫で楽しく共存できます。
他の猫と比べ、よく周りをじっと観察する猫で、「あ〜今この子、何かいろいろ考えてるな・・」というのがよくわかります。頭の中で思考がぐるぐると回転しているであろう様子は日常。
じっと観察し、様子を伺い、考えて行動する様子は「ドレイン・キャット」呼ばれ、下水溝を寝床に狩りをして暮らしていた頃からのDNAなのかもしれませんね。
そんな彼らと一緒に暮らすのは、人間の子供が増えた様で面白いです。
シンガプーラの罹りやすい病気と寿命
シンガプーラは、ピルビン酸キナーゼ欠損症や尿石症、心筋症に罹りやすいと言われています。
このブログの読者の方はすでにご存知でしょうが、わが家のバロンも「肥大型心筋症」です。2歳の頃に発覚しました。この病に付随して「僧帽弁閉鎖不全症」と「左室流出路狭窄」と診断され、今も投薬治療中です。
シンガプーラに限らず、原種の猫は雑種の猫よりも遺伝性の疾患にかかりやすく寿命も短い傾向にあると言われています。ペットショップで飼われた場合はとくに、ペットショップで行われていた健診や診察の結果などで安心せず、早くから定期的に健康診断をしておいた方が良いです。
猫の種類によって、罹りやすい病気がありますので、事前に調べ、気に留めておいた方がよろしいでしょう。
最後に
短毛の猫は比較的活発だと言われます。
シンガプーラは短毛種でも、おとなしくて静かだと紹介されることが多いのは事実。おとなしさや静かさを最初から前提条件にペットを飼うのは、亀や熱帯魚とは訳が違うので、そもそもどうなのかしら・・。
これからシンガプーラを家族に迎えられる方はきっと、人間の子供がひとり増えたような感覚を覚えるのでしょう。賢く、人に寄り添い、繊細でいて感情的な一面が見られるシンガプーラ。育て甲斐があり、より愛情深い関係が築けることでしょう。あえてシンガプーラがオススメできない点を挙げるとすれば、お別れの後のペットロスに要注意です。